前回は決算書を読めるようになるまでの話を書きました。
今回はその続き。財務を理解したことで、実際の経営判断がどう変わったか。具体的なエピソードを書きます。
撤退しようとしていた事業があった
財務を学ぶ前、撤退を考えていた事業がありました。製造工場の下請け作業です。年間の売上は約400万円。うちの全体売上からすると小さい数字で、「この仕事、やめた方がいいんじゃないか」と正直思っていました。
売上400万円という数字だけ見ると、確かに大きくない。人手もかかる。手間もかかる。やめて他の仕事に集中した方が効率がいいんじゃないかと考えていました。
でも、財務を学んだことでその判断が180度変わりました。
仕入れのない400万円の本当の価値に気づいた
製造下請け作業は、材料の仕入れがほぼありません。人件費と手間がかかるだけで、外部への支払いが少ない。つまり粗利率が非常に高い仕事です。
財務を学んで粗利の概念を理解した時、この事業の見え方が完全に変わりました。
仕入れのある仕事(粗利率50%)で800万円の売上 → 粗利400万円
仕入れのない下請け仕事で400万円の売上 → 粗利約400万円
つまり、売上の数字は半分でも、手元に残るお金はほぼ同じ。
売上400万円という数字だけ見て「小さい」と判断していたのは、完全な間違いでした。粗利で見れば、売上800万円の仕事と同等の価値がある。財務を知らなければ、この判断ミスをしていました。
撤退ではなく「伸ばす」判断をした。
この気づきによって、判断が180度変わりました。撤退ではなく、この事業を伸ばす。それが正解だと確信しました。
では、どうすれば伸びるか。考えた結果、やることはシンプルでした。元請けさんからの信頼を高めて、仕事量を増やしてもらう。そのために、まず工場の5Sを徹底する。前の記事で書いた清掃や整理整頓の取り組みは、この判断から来ていました。
財務理解 → 下請け仕事の粗利率の高さに気づく
↓
撤退ではなく伸ばす判断
↓
5S徹底・品質向上・単価交渉
↓
単価10%アップ・仕事量増加
財務を知らなければ、この流れは生まれなかった。数字の見方一つで、経営判断は全く変わるということを、身をもって経験しました。
過去の決算書を見て「売上至上主義の罠」に気づいた
もう一つ、財務を学んで気づいたことがあります。過去の決算書を見た時のことです。
前の経営体制の時、売上は今の5倍以上あった時期がありました。でも、その時期もバッチリ赤字でした。売上がこれだけあるのに、なぜ赤字なのか。最初は意味がわからなかった。
でも財務を理解してから見ると、理由がはっきりわかりました。売上は大きくても、コストがそれ以上にかかっていた。利益体質になっていなかったんです。
売上至上主義の罠:売上を上げることだけに集中して、コスト管理を怠る。もしくは安売りしまくる。
結果:売上は大きくても利益が残らない。むしろ赤字になる。
正解:売上よりも利益体質を作ることが先決。
「売上があれば大丈夫」という考え方がいかに危険か。過去の決算書がそれを証明していました。自分が経営を引き継いだ時に最初にコスト削減から手をつけたのは、この考え方があったからでもあります。
財務を学ぶと自信を持って経営できる
財務を学んだことで変わったのは判断力だけじゃありません。銀行の担当者や税理士との会話でも、知識が入るにつれて話についていけるようになった。自信を持って対話できるようになった。
以前は銀行との面談が正直怖かった。何を聞かれるかわからない、答えられないかもしれない、という不安がありました。でも今は、実態ベースで数字を説明できる。何を聞かれても答えられる。この自信は、経営者としての土台になっています。
財務は難しいと思われがちですが、経営者なら絶対に学ぶべきです。特に零細企業の経営者は、自分で数字を理解していないと判断を誤る。それがどれだけ危険かは、自分の体験が証明しています。
次回は、社員2人との関係をどう築いたか。入社直後から信頼を作るためにやったことを書きます。



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