前回はリスクの考え方を書きました。適正なリスクを取り続けることが本当の安定だという話です。
今回はその実践編。実際にリスクを取って正解だった話と、リスクを判断して撤退した話を具体的に書きます。
撤退した話。目に見えない赤字が積み上がっていた
2期目に工場の下請け仕事で、新しい種類の仕事を受けました。新しいことへのチャレンジという意味では、適正なリスクを取るという考え方に沿った判断でした。
でも、やってみてわかったことがありました。どんなに工夫しても、益が出にくい仕事だったんです。
・作業に時間がかかりすぎる
・単価に対して工数が合わない
・社員も自分も疲弊していく一方
・他の仕事への機会損失が大きい
帳簿上は赤字ではない。でも、この仕事に時間と人手を使い続けることで、もっと益が出る仕事を受けられない。目に見えない赤字が積み上がっていく感覚がありました。
1年ほど続けた後、勇気を持って撤退させてもらいました。元請けさんには申し訳ない気持ちがありました。でも、このままだと社員も自分も疲弊していくだけ。機会損失がどんどん積み上がっていくだけ。正直に状況を説明して、撤退という判断をしました。
撤退は逃げじゃない。正しい判断だった
撤退という判断は、当時かなり勇気が必要でした。一度受けた仕事をやめるのは、相手に迷惑をかけることになる。「続けた方がいいんじゃないか」という迷いもありました。
でも、振り返れば正しい判断だったと思っています。
続けた場合:社員が疲弊 → 他の仕事のクオリティが落ちる → 機会損失が積み上がる
撤退した場合:リソースが解放される → 益が出る仕事に集中できる → 会社が良くなる
撤退は逃げではありません。正しくない方向に進み続けることをやめる、正しい判断です。損切りができる経営者は強い。それを身をもって学びました。
リスクを取って正解だった話。600万円の仕事
一方で、リスクを取って正解だったのが、以前の記事で書いた600万円の仕事です。
本来ならお断り案件でした。人手が少ない、経験が少ない作業内容、工期が長くてキャッシュリスクが高い。客観的に見れば、リスクが高すぎる案件でした。
でも、リスクを取りながら同時にリスクを小さくする工夫をしました。
・仕入れのタイミングを分散してキャッシュリスクを下げる
・2ヶ月以内完工という目標から逆算して段取りを組む
・作業内容を事前に徹底的に学んで準備する
・進捗を毎日確認して遅れを即修正する
結果は目標通りでした。利益が出て、経験が積み上がった。「やれるじゃん」という自信につながりました。
撤退した仕事との違いは何だったか。それは、工夫次第でリスクを小さくできるかどうかでした。工夫してもどうにもならない仕事は撤退する。工夫すればリスクを管理できる仕事はチャレンジする。この判断基準が、2つの経験から見えてきました。
リスク判断の基準
2つの経験を通じて、自分なりのリスク判断の基準が見えてきました。
チャレンジする条件:
・工夫次第でリスクを小さくできる
・失敗しても致命傷にならない規模
・成功した時の経験や利益が見合っている
撤退する条件:
・どんなに工夫しても益が出ない構造
・続けることで他の機会を失い続ける
・社員や自分が疲弊していく一方
この基準は完璧ではありません。判断を間違えることもある。でも、基準を持つことで迷いが減ります。迷いが減れば判断が速くなる。判断が速くなれば動きが速くなる。経営においてスピードは大きな武器です。
逃げたくなる自分に勝つことが経営
リスクを取る判断をする時、必ず「逃げたくなる自分」が出てきます。チャレンジする前に、撤退する前に、どちらの場面でも逃げたくなる瞬間があります。
チャレンジする場面では「やめておいた方が安全じゃないか」という逃げが出る。撤退する場面では「もう少し続ければ良くなるんじゃないか」という逃げが出る。
その逃げたくなる自分に勝つことが、経営者としての仕事の一つだと思っています。正しい判断をするために、自分の感情と向き合い続ける。それが経営の本質の一つかもしれません。
次回は、経営を始めた当初を振り返ると、実は毎日全てがコンフォートゾーンの外だったという話を書きます。作業内容も知らない、決算書も読めない、銀行とも話したことがない。そんな状態から始まった日々のリアルを書きます。



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